2013.07.09

廣島です。お暑うございます。

先週は国際電子出版EXPOと東京国際ブックフェアを観るため
東京ビッグサイトへでかけてきました。

そこで聴講した外山滋比古先生の講演会が思いがけず自分の胸に響くものだったので、
ここに書き留めておこうと思います。

講演は「思考力を鍛える本の読み方~乱読のセレンディピティ~」と題して
読書法をテーマにおこなわれました。

※以下はメモをもとに書き起こした要旨の一部抜粋です。
 実際の表現とは異なる箇所もあると思いますがご容赦を。

本というものは広く乱読していると思いがけない発見や出会い
(=セレンディピティ)をもたらすことがある。

実はそれこそが新しいものを考えるヒントになる。
一見役に立たないような難しい本や知らないものに触れることで、
自分の中である種の化合が起こり新しい独創が生まれるのだ。

広く読むと言っても知識を増やす本など選んではいけない。
自分の考え方を定めるような、自己発見のための読書をするべきである。
なぜなら知識は老いれば失われるが、考え方というものは決して衰えないから。

そのような本は、自分の専門とする領域から見つけることはできない。
むしろまったく異なるジャンルの中に存在する。

本との価値ある出会いは身近なところではなく遠い場所にあるものを
広く読むことでしか生まれないというのです。

英文学が専門である外山先生自身も、劇作家の菊池寛や物理学者の寺田寅彦が
執筆した本を読んで、その後の生き方の指針を発見したのだとか。

なるほどなあと思いました。

たしかに、ネット上の書店で「あなたにおすすめの本」なるものを買って、
好きな作家や関心をもっているテーマの本をいくら読んでも、
新しい発見に出くわすことなんてまずありません。

これは慣れたものに触れることの安心感やまとまった情報を自分の中に
定着させることがその価値になっているケースなのでしょう。

価値ある本というのは、もっともっと遠い場所にあるのですね。

ところでこの話は、本に限らず人とのかかわりにもあてはまると
外山先生は言います。
「海のものとも山のものとも知れない人間」とつきあうことで
新しいひらめきに行きあたるものだと。

これは思いあたるふしがあります。
先週、数年ぶりに会った知人は企業勤めのエンジニア仕事を辞めて、
ひそかに準備していたこれまでとは全く違う仕事を始めると教えてくれました。

その仕事は自分にとって地球の裏側の出来事のように
実感のわかない種類のものだったけれど、
彼から聞いた話は実に新鮮で深く深く感じ入ってしまった。
こんなことは久しぶりの体験でした。

本や人とのこのような出会いをもっと増やしていきたい。
それが本日の結論であります。

(廣島)

写真

本文とは関係ないですが国際ブックフェアの会場にあった手塚治虫書店。
ブックフェアは楽しい本屋がたくさん出店しています。